砂上の楼閣 【9割以上の生徒がハマるやってはいけない勉強法】

勉強にまつわる話

優秀な生徒と、そうでない生徒の差

突然ですが、砂場で砂の山を作ったことがありますか?多くの方が作った経験があるのではないでしょうか。今まで作った最大の山はどのくらいでしたか?ギネス世界記録は、なんと12mだそうです。

長年生徒を見てきて、優秀な生徒とそうでない生徒の決定的な差はここにあると思っています。その差とは高い砂の山を作れるかどうかです。

9割以上の生徒が陥る勉強の落とし穴

中高6年間の英語の時間はおよそ1000時間あります。大学入試を突破するレベルに到達するまでにかかる英語の学習時間が1000時間と言われているので、理論上は夏休みなどの長期休暇に勉強を全くせず、家庭学習も全くしなくても、学校の授業だけで十分難関大学へ合格することは可能なはずです。

現実はそう簡単にはいきません。ひとつには、6年間という長いスパンでの1000時間なので、記憶のメンテナンスに時間がかかるため、実際はその倍近い時間がかかることになるからです。しかし、倍の2000時間ほど勉強をしてもなかなか学力が向上しない生徒もたくさんいます。それはなぜか?

ほとんどの生徒が目の前のものごとだけに意識を集中しているからです。具体的には、日々行われる小テストや定期試験で点を取ることだけを目標にしてしまっているのです。こういったことは決して悪いことではないのですが、目標の設定が間違ってしまったことにより、小さな山を作ってはまた崩れ、また小さな山を作るということを繰り返し、せっかく累計では長時間学習したにもかかわらず、その学習が自分のものになっていないのです。

例えば、小テストがあるからと言って、直前の休み時間に勉強をしてなんとか合格点を取るが、次の日にはほとんど忘れているとか、定期試験の前日に徹夜をして、なんとか平均点を取れるように即席で点が取れそうな部分に振り切って勉強をし、試験が終わるとすっかり忘れてしまったりするということです。こういった勉強方法ではいつまでたっても高い山を築き上げることはできません。では、何が間違っているのでしょうか?

勉強において最も大切なこと

それは、目標設定です。

「10mの山を作る」ということになれば、適当に砂を集めても決して出来上がりません。まずは土台から計画的に作ることになるでしょう。勉強も同じです。「何のために勉強をしているのか」これが、一番大事です。ここが定まっていないと、先ほどのような場当たり的な悪い勉強に陥ってしまうのです。

大学受験はただの通過点

勉強における目標設定とは何か?大学受験でしょうか?私はそれは違うと断言します。大学受験に合格することは、確かに一つの目安にはなるかもしれませんが、目標ではないし、大学受験に目標を置いてはいけません。なぜなら、大学受験の後にもまだまだ人生は続くからです。むしろ、ここからが本番です。答えのない、自分で創り上げていく、十人十色の人生が待っているからです。

つまり、勉強の目標とは、自分の未来を切り拓くために、困難に直面しても、課題を解決し、対応することができる素養を身につけることです。もう少し具体的に言えば、学習を通じて、幅広い知識と思考力を身につけ、その過程で悩んだり苦しんだりしながら試行錯誤を繰り返し、失敗や成功を重ねることです。

幅広い知識

知識がなければ選択できません。アクチュアリーと呼ばれる資格を知っていますか?この資格を持っていると数理業務のプロフェッショナルとして様々なフィールドで活躍することができます。(詳しくはアクチュアリーの公式HPをご覧ください)

あまり知られていないこの資格ですが、有資格者(正確には正会員)は公認会計士や弁護士に並ぶ年収を稼ぐことも可能だと言われています。数学的なセンスが必要なので、数学が好きな人には実はお勧めな資格であります。知識があることで選択の幅が広がるのです。

高い思考力

たとえ豊富な知識があったとしても、高い思考力を持ち合わせていなければ、正しい選択はできません。

特に現在は目まぐるしく世界の常識が移り変わり、昨日まで当たり前だったことが必ずしも正しいとは言えません。ネット上には様々な情報が溢れており、たとえばGoogleで「コーヒーは身体に良い」と検索すると3000万件以上ヒットし、「コーヒーは身体に悪い」だと1300万件以上ヒットします。私たちには情報を取捨選択する思考力が必要なのです。

失敗と成功の経験

幅広い知識と高い思考力があったとしても、現実世界には不確定要素が多いため、実際は思い通りにいかないことがほとんどです。思いもよらない壁にぶつかることもあるでしょう。そんな時、その壁を乗り越えることができるかどうかは、その人の経験値に大きく左右されます。今までチャレンジをあまりせず、失敗も成功もしてこなかった人だと、壁を見たらすぐに引き返してしまうでしょう。未来を切り拓くには様々な経験が必要不可欠なのです。

最後に

このような未来を切り拓くのに必要な力を身につけることに目標を置くことで、すぐ忘れてしまうような勉強方法をしたり、宿題を写したりすることに全く意味がないと気が付くでしょう。

Appleの創業者スティーブジョブス氏はスピーチの中で以下のように述べています。

you can’t connect the dots looking forward;
you can only connect them looking backwards.
So you have to trust that the dots will somehow connect in your future.

「未来を見て点と点をつなげることはできない。振り返った時に初めてつなげることができるのだ。だから、将来何らかの形でその点がつながると信じなければならない。」

彼は学生時代に将来役に立つかどうかなど考えずに、興味を持った「文字の書き方」に関する授業を熱心に受けたそうです。その後、マッキントッシュを開発している際に、大学で学んだこの知識を活かし、ウィンドウズとは一味違う、美しいフォントを持つPCを開発したのです。

(このスピーチは非常によいので、見たことがなければぜひ見てみてください。15分程度ですが、あっという間に感じると思います。スティーブジョブス伝説のスピーチ

学校で学ぶ教科は、すべての知識思考力の土台となるのです。「古典なんか将来役に立たないから勉強する必要がない。」とよく耳にしますが、そこには先人たちの深い知恵や洞察が含まれています。彼らの思考法を学ぶことで、新たな気付きや知恵を得ることができるのです。また、一見すると無意味なように思える助詞助動詞を覚えて、識別していく作業も、例えば、プログラミングのように新しい知識を身につけ応用していく際に同じような思考法が活きてくることがあるのです。

あなたが作っているのは砂上の楼閣になっていませんか?もしそうなら、考え方を変えましょう。私の経験上ほとんどの生徒が陥っている誤りなので、この考え方を変えるだけで、他の生徒と大きな差を作ることができます。今からでも遅くないですよ。

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