榊浩平さんの著書「スマホはどこまで脳を壊すか」を読み解きます。教育現場での実情とも照らし合わせ、スマホ依存がいかに深刻な問題なのかを解説します。
インターネット使用が脳へ及ぼす悪影響
平均年齢11歳の子供たち223人を3年間追跡調査し、インターネット使用と脳の発達についての研究結果が以下のとおりです。
脳に悪影響があった部分が黒くなっています。見やすくするために赤で囲みました。「インターネットをほぼ毎日使用する」と回答した子供たちの脳は3年後ほとんど発達していなかったのです。
私の勤務する学校でも中学受験を終え、中学入学と共にスマホを買い与えられる生徒も多いです。そして、それから3年間スマホ漬けになると、中学1年生の時と高校1年生の時で脳の発達がほとんどないということなのです。これは、現場の感覚としても納得のいくものであります。中学1年生の頃は賢かったのに、スマホ依存になってしまった生徒が、高校1年生に上がる頃には学年でもかなり下位の成績になっているということはよくある話です。
以下のような写真を見たことがある人も多いでしょう。タバコを吸い続けた人の肺の写真です。
継続的なタバコの使用と同じように、インターネットの過度な使用が脳を壊していってしまっているのです。
スマホ✖️勉強✖️睡眠 の相関性
睡眠時間をしっかりと確保した上で、毎日3時間以上勉強をしたとしても、スマホ等の使用時間が1日あたり3時間以上だと、平均より低い成績しか取れなかったのです。以下の研究結果をじっくりと見てみてください。
※スマホ等の使用とは正確には「インターネット接続ができる機器(スマホ・タブレット・音楽プレーヤー・ゲーム機など)」のことを指します。
これは驚きの結果でした。私の感覚では、スマホ等の使用によって、睡眠時間や学習時間が削られ、それにより、成績が下がるということかと理解していたのですが、実際は十分な睡眠時間をとりながら、どんなに勉強をしたとしても、スマホを3時間以上使うと成績は上がらないということです。
つまり、スマホ依存が脳の機能を破壊し、平均以上のパフォーマンスを出すことを不可能にしているということです。
ながら勉強と学力の関係
以下は勉強中に勉強以外の目的でスマホ等を使用する「ながら勉強」をしている子供たちと、していない生徒たちの学力の関係です。
ながら勉強をせずに、1日30分未満の勉強をする子供たちと、ながら勉強をする、1日3時間以上勉強をする子供たちの成績がほとんど同じという結果が出ました。
おそらく1日30分未満と回答した子供たちの多くは全く勉強しないと回答する子供たちも多くいると思います。つまり、1日30分でもスマホ等をいじらずに勉強をすれば、平均を超える成績を取ることができるということです。
とはいえ、ながら勉強をする子供たちなんて大した数はいないと思っていましたが、こちらも私の想像を遥かに超えた数の子供たちがながら勉強をしているという調査結果がありました。
小学5年生でおよそ54%が、中学3年生では80%以上の子供たちがながら勉強をするという結果です。
脱 スマホ
今まで見てきたように、スマホ等の依存により、子供たちの脳は破壊され、いくら寝ても、いくら勉強時間を確保しても、学力が上がらないということが浮き彫りになりました。
ただ、タバコで汚れた肺も、禁煙を続けることで少しずつキレイになるように、スマホを断つことで学力が回復するということもまた研究で明らかになっています。つまり、現在スマホ依存になっている子供たちも、まだ回復の可能性は残されているということです。
しかし、スマホをやめたい・スマホの使用時間を減らしたいと考えた子供たちが、実際にやめることができたのがわずか2.9%、1時間未満の使用まで減らせることができたものが10.1%しかいないというデータもあります。およそ87%はやめたくても・減らしたくてもそうはできないのです。
スマホ依存はアルコール依存に匹敵する依存性があります。意志の力でどうにかなる問題ではありません。保護者の人のような最も身近な人が、介入し、管理してあげないことはには、この問題は絶対に解決することはできません。
何事も裏と面があります。車の登場により、我々の生活は一変しましたが、日本ではおよそ1日に11人もの人が交通事故で亡くなっています。テクノロジーの発展により、我々の生活は豊かになりましたが、一方で失っているものもあります。テクノロジーの良い面ばかりではなく、それがもたらす負の面についてもしっかりと認識をし、対処していく必要があると強く思います。
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