例解 和文英訳教本シリーズは全部で4種類あります。その中でも英語教師の中でも評判が良い「文法矯正編」について以下のポイントに絞って解説します。著者は受験界では有名な小倉弘さんです。
レベルと特徴
使ってはいけない人
メリットとデメリット
使い方
レベルと特徴
レベルは高めです。ただし、ものすごい難しいかというとそんなことはありません。偏差値60程度の国立大学レベルの問題で構成されています。参考書のレイアウトは基本的には見開きで完結していますが、3〜4ページ続くこともあります。
この教材は私の周りの英語教師の中では非常に評価が高く、市販されている受験用参考書の中で最も評価が高い参考書といっても良いでしょう。その理由は、その名の通り「文法」に関係する解説が豊富で、今までの参考書と一線を画しています。
例えば、仮定法でなぜ過去形を使うのか考えたことはありますか?この筆者は、過去形を「遠い形」と呼んでいます。その説明は次の通りです。〈時間的に遠い〉場合、一般的に世間でいう「過去形(遠い形)」を用います。そして、仮定法は、〈現実から遠い話〉について言及するものなので、「過去形(遠い形)」を使うというものです。同様に、Will you 〜 より Would you 〜 が丁寧になる理由もこの考え方で説明可能です。普通、仲の良いもの同士であれば、関係が近いので丁寧な表現は使いません。一方で、丁寧な表現を使うということは〈関係が遠い〉場合が多いのです。従って、丁寧な表現は「過去形(遠い形)」を用いるのです。
このように、文法に対する造形が深い著者による解説が腑に落ちるため、英語教師や、英語マニアからの評価が非常に高くなっています。
使ってはいけない人
参考書としては非常に優秀であり、「へー、そうなんだ!」と目から鱗が落ちるような説明も多いのですが、大学受験で合格点をとることが目標の人にはお勧めできません。
それは、ここで説明されていることの多くが、及第点の英語を書くことではなく、それを超えたより良い英語を書くためだからです。つまり、多くの受験生にとってオーバーワークになる可能性が高いということです。
大学受験の英作文の現場においては、ネイティブが書いたような綺麗な英語も少し不自然だがミスのない英語も得点において大きな差はありません。つまり、最短で合格点を取りたい人にとっては、ミスのない英語が書ければ十分なのです。京都大学のような一部の超難関大学においては、その表現の差まで得点となる可能性はありますが、それでも合格点をとるのにここまで学習する必要はないと断言します。実際に、かつての教え子で東京外語大学(入試英語においては最難関)に合格した生徒はこの一つ前のレベルの参考書(例解 和文英訳 公式運用編)までしか学習しませんでしたが、余裕をもって合格しました。
また、ハイレベルな教材のため、基本的な文法の知識が確立している人向けになります。アップグレードのような問題集の知識はすでに頭の中に入っており、基本レベルの英作文は一通り書けるという人です。そうでなければ、まずは、そういった文法の基礎固めと基本的な英作文の勉強を最優先しましょう。
もちろん、英語が好きで、英語を深く学びたい人や、すでに英語以外の教科も十分な力があり、かつ英語で合格点を大きく超えるような点を取りたい人は学習する価値は大いにあると思います。
メリット と デメリット
今まで述べてきたように、メリットは深い文法的な理解を得ることができ、より良い英作文が書けるようになることです。
一方でデメリットは、入試においてはミスのない英文が書ければ十分合格できるのに対し、この参考書はそれを超えた英文を書く力に焦点を合わせています。合格が目標の場合はオーバーワークになってしまうので、ここまで学習する必要はないでしょう。
使い方
それでもこの参考書を使って学習したいという人に向けて、使い方を解説します。
使い方は一般的な和文英訳の参考書と同様です。①日本語を見て自分の力で英語にしてみる(その際辞書などは使わない)②自分で書いた英文に自信がなければ辞書(英和辞典が望ましい)などを参考にして、見直しをする③解説をよく読み、理解する④(模範解答と違かった場合)もう一度日本語を見て英語にする⑤模範解答を数回ノート等に書き、覚える⑥2周3周と繰り返し学習する
ほとんどの場合、最初に自分が書いた英文と模範解答が一致することはないと思います。模範解答とは違うけど、自分の表現は正しいのだろうかと思うことも多いとは思います。可能であれば学校の先生など、身近な人にチェックしてもらいましょう。もしそれが難しければ、自分の表現の正しさを調べたりする時間がもったいないので、とりあえず模範解答を理解し、覚えてしまいましょう。
また、「和文英訳教本 文法矯正編」の特徴として、毎回テーマが書いてあります。なかなか難しいのですが、このテーマを先に見てしまうと「今回は現在完了って書いてあるから、現在完了使うのかな?」というような予想をしてしまうため、できれば上に書いてあるテーマを隠して英訳に取り組むといいでしょう。
英作文は習得するのにそれなりの時間がかかります。英作文をテーマにした記事も書いてあるので、こちらも参考にしてみてください。
まとめ
非常に良い参考書であるものの、入試レベルを超えているため、多くの受験生にとっては不要です。実際に東大や東京外語大学に合格していった生徒にこの参考書を勧めたことはありませんでした。
一方で大学生や社会人でより良い英語を書きたい人や、塾や学校で英語を教えている人にとってはお勧めできます。
コメント